時々…、人の話を聞いていて…「そりゃぁ~言い過ぎじゃない? 当時はそれで精一杯だったんだろうからさ…」って思う事があるんです。
鍼灸を生業にしていると、鍼灸って、事あるごとに現代医学と比較されて「科学的ではない!」とか「エビデンスに乏しい!」とか「古臭い!」とか「怪しい!」とか「熱いの嫌い!」「痛いの嫌!」…(^_^;) などなど…、色々な事を言われるか…、もしくは言葉に発せられなくても、相手の表情が物語るというか…、話し相手の表情の片隅に怪訝さを感じる事があったりするんです…。
鍼灸院に鍼灸治療を受けに来られる人達は、そんな事はありませんけどね…
現代医学の信奉者というか、東洋医学や鍼灸医学に理解がなく、現代医学の治療しか受けた事がない人と話をしていて、話の流れから「今、どんな仕事をしてるの?」って質問に「鍼灸師です!」って答えると、時々ですが…怪訝な表情をされる事があります。まぁ~…僕が相手の表情から読み取って察知してしまうんでしょうねぇ~…(^_^;)
過去の経験から言えば…
好奇心旺盛な人だったら、怖いもの見たさで、「効くの?」と聞いてくる人もいたり…
「このバネ指!治して!」と挑戦的な態度で接する知人もいましたし…(^_^;)
時々…「興味あるんだけど!」と、色々な質問をする人もいたりと…
その都度、反応は人それぞれではあるのですが…
過去を振り返ると、鍼灸師になりたての頃は、訝しげな感じをあらわにする人は、鍼灸に対しての訝しさなのか?…それとも僕、個人に対する不信感なのか?…それとも僕の人徳の無さが原因か?…(^_^;)…などと、色々と勘ぐってしまいがちになり、自己嫌悪とはいかないまでも、「何でなんだよぉ~!」と、軽く憤りを感じる事も多々ありましたねぇ~…(^_^;)
…でも、もう鍼灸師を23年以上やっていると、心臓にも毛が生えたのか…「理解しようとしない人には、何を言っても理解しないだろうなぁ~」…って達観視するようになりましたけどね…(^_^;)
話は変わって…
僕は子供の頃から歴史が好きだったんです。
ここ数年前から、ハマってるのが、ポッドキャストで聴いているCOTEN RADIOという番組なんですけど…、3人の福岡の若者が…、…確か僕より年下だと思うので「若者」という表記にしておきますが、この人達が、多くの歴史資料や本を読み漁って、詳しく話してくれる歴史解説が、とても面白いんですよぉ~♪
初回の吉田松陰編から聴いてるので、もう…随分、楽しませてもらってますねぇ~。
そんな中、今年の5月頃だったかな? アメリカで初めて女性の西洋医学の医師として活躍した、Dr.エリザベス・ブラックウェルの話を紹介してくれたんです。…面白かったですよぉ~。
ただね…ちょっとだけ…「確かに…それは…そうだけどもさぁ~」って思った場面があったんですよねぇ~。それは…11話中の5話目だったと思うんですが…、解説者のヤンヤンさんが、Dr.エリザベス・ブラックウェルが医学を学んでいた頃の、その時代の医学の現状を話されていたんですよねぇ~。
エリザベス・ブラックウェルって1810年生まれの人ですから、ちょうど、その頃は、細菌が発見されたり、X線が発見されたり、麻酔や消毒の知識が高まったりしていた頃ですから、まぁ~当時の医学レベルは、今の医学から比べると初期も初期で、今の常識から考えれば「マジで!?」って思うような事が、まかり通っていた時代だったと思うんですねぇ~。
その事を、ヤンヤンさんは、色々な本に書いてあった事案を紹介しながら、説明されていたんですけど、「当時は痛ければ、痛いほど効いている…」とかね…、「具体的な処置法として有名なのが、体を切って血をドバドバ体外に出す。瀉血ですね!…体に溜まった不要物とか有害物を血液と共に外部に排出させる…。だいたい、当時の医者は、これをやるんです。」という解説に、「わぁ~血を出せばいいと思っているんですね!」…と仰る、聞き手の樋口さん。
まぁ~ねぇ~…確かに、アメリカに限らず、200年前の日本でも…、時代的に言うと、江戸時代の後期…、漢方を薬として使っていたけど、当時、漢方薬も高価でしたから、薬を買えるのは裕福な人しか薬剤療法は行われていなかったわけで、当時の日本で、一般庶民に行われる治療は、鍼・灸・もしくは瀉血の治療が頻繁に行われていたという記録が残ってますし、梅毒の治療に水銀が使われていたという記録も残っています。…皆さんが歴史の授業などで『解体新書』の杉田玄白って名前を一度は聞いた事があると思いますが、あの時代の話です。
それと、瀉血ではなく刺絡もこの頃に行われていました。…瀉血と刺絡の違いに関しては、後で解説しますね!
当時はヨーロッパやアメリカより、日本は少し現代医学のスタートは遅れてはいるものの、今みたいにインターネットの時代では、ありませんしねぇ~。江戸末期に蘭学の導入が始まった事を考えると、世界中の色々な所で、多少の時差はあるにせよ、同時多発的に現代医学が芽吹き始めたって事だと思うんですよねぇ~。
COTEN RADIOのエリザベス・ブラックウェル編で、ヤンヤンさんと樋口さんは、試行錯誤していたであろう頃の医学の事を、説明されていたと思うんですが、「当時は痛ければ、痛いほど効いている…」とか「血を出せばいいと思っている…」って言葉を聞いた時に、鍼灸師である僕としては…
「そうじゃないんだよなぁ~」
…って感じたんですよぉ~。別に、ヤンヤンさんと樋口さんが悪いって言っているのではなくて、一般の人の考えって、こういう感じなんだろうなぁ~って思ったんです。
僕が思うに…
現在の医学レベルと、過去の医学レベルを比較して、現代医学の優位性を高める事は避けるべきだと思うんですよねぇ~。
なぜかと言うと、それをしちゃうと、医学に関わった先人に対して失礼だと思うから…。
なんとなく…、現在の医学レベルと、過去の医学レベルを比較すると、誰もが過去の医学のレベルの低さを感じると思うので、個人的に、とても好きな COTEN RADIO ではあるんですが、ちょっと違和感を感じたというか、「意義あり!」って思ったんですよねぇ~…(^_^;)
誰しも最初は、試行錯誤はするものですし、現代医学であろうが、昔からある医学であろうが、医学って、色々な犠牲の上に成り立っていると思うんです。
今の時代だと、医学というものは、科学的根拠(エビデンス)があって、薬や手術で治す事が医学である。…って考えている人が多いと思うんですよねぇ~。
よく、薬効成分のない偽薬を、本物の薬と信じさせて服用させ、症状が改善する現象と言われる、プラセボ効果…別名、プラシーボ効果を取り上げて「これって偽薬効果ですよ!」と、メディアが偽物扱いするものだから、医療は効果のある薬を飲むことで成立する。効果の無い薬を飲むなんてナンセンスだ!…もしくは、悪い部分を手術で切除する事で成り立つ事が医療だと、一般の人は勘違いしてると思うんです。
例えば…、不安な気持ちが原因で体調を崩してしまった人の話を聞いてあげて、少しでも不安な気持ちを解消してあげるカウンセリングのような事も、立派な医療だと思いますし…。
麻痺してしまった部分の機能回復をはかるためのリハビリも立派な医療ですし…。
身体が冷えている事で体調を崩していれば、身体を温めれば、身体は回復するでしょうし…、その逆もありですしね!
鍼やお灸を使って体のコリを取ってバランスを整えるのも、立派な医療だと思うんですよね!
薬を使わなくても…、手術をしなくても…、医療というものは成り立つと思うんです。
ただ、症状や病気には程度があります。…重症だったり、軽傷だったりで、その都度、どの医療が適しているかは症状や病状によって変わります。…適材適所ってやつですよね!
人の身体って、凄く複雑でもあるのですが、単純な側面も持ち合わせてるんですよねぇ~。
悪い部分を手術で切除したり、薬を使わないと治らないような複雑な場合もあれば、食中毒のような場合は、早く体から悪い物を出す。…出す場合は、上から出すか!下から出すか!…嘔吐か下痢で、悪い物を体外に排出する事で体調は回復に向かうでしょうし、瀉血の場合も、基本は血液の循環が悪くなっている事が原因で起こる病気の場合、血流を良くしてやる事で、体調の回復を図る治療法なんですね! 昔は今みたいに居住環境が良くないので、寒くなると血行不良を起こしやすくなっていたんだと思うんです。
当時、瀉血は静脈をターゲットにして、出血を促すようにやっていたみたいです。度が過ぎると貧血を起こしていたという記録も残っていますが、今、現在、瀉血はやってはいけない行為になってます。…その代わりと言ってはなんですが、江戸時代の中期から、刺絡という毛細血管を対象とした治療法は、現在でも広く行われています。
刺絡と瀉血の違いは、ターゲットが違うという大きな違いがある事と、刺絡の場合は出血させる事が目的ではなく、体にかかる負担を最小限に抑えながら、血行を良くするという治療法で、平成17年に、首相だった小泉さんの国会答弁で「…三稜鍼などを用いての井穴刺絡などの刺絡は、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律に規定する、はり業に含まれると認識してよいか?」という質問に、首相の小泉さんが「…三稜鍼を用いた手技は、瀉血を目的とするものではなく、一般的には、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条に規定する「はり」に含まれるものと考えている。」…と答弁された記録が残っています。…この一文が国会の公式的な文章として残っているという事は、法的にも刺絡は鍼灸師が行う事が出来る医療行為の1つだという証明でもあると思うんですよねぇ~。
あと…、歴史好きの鍼灸師・漢方医・薬剤師なら『金元の四大家』の事は御存知だと思うんです。
今だと、ネットで『金元の四大家』と検索すると、AI君が答えてくれると思いますが…
中国の『金』という時代や、『元』という時代の、有名な4人のお医者さんの話です。
ある、お医者さんは、病気は熱によって起こると考えて、身体を冷やす事で病気を治そうとしていたり…。
また、ある、お医者さんは、悪い物が体の中にあるから病気になると考えて、吐かせたり、下痢させたり、汗をかかせたりして病気を治そうとしました。
また、ある、お医者さんは、胃腸を整える事で健康が維持できると考えて、胃腸を整える事に重きをおいた治療を得意としていましたし…。
また、ある、お医者さんは、陰陽で考えれば、人間の体は、陰が不足しがちだから、陰を補う事が、病気を治す最善の方法だ!…と、陰を補う治療をしていた4人の有名な、お医者さんを『金元の四大家』と言います。
今にして、この金元の四大家の考え方を見れば、どれも間違えではなく、昔から言われている、お婆ちゃんの知恵袋的な養生を基礎として、日常生活の中で、自分の体の変化に自分自身が気が付いて、その都度、対処する事で、健康は維持できる。…という事だと思うんですねぇ~。
現代は情報過多で忙し過ぎて、自分の体調の変化に気が付く余裕も、調整する余裕も無い!…そんな暇はないから、何か病気の症状が出たら薬を飲んでやり過ごす…。そんな生活が日常になってる人って多いと思うんですよねぇ~。
それと…
現代人の医療に対する要求って、なんとなく、無理難題を解決してくれる魔法の杖や呪文みたいなモノを求めているような…そんな感じがするんですよぉ~。本来ならば、人間の体は、複雑であるけど、単純でもあるから。単純な行為で治せるうちに治しておいた方が良いって事を、もう一度、認識しなおした方が良いと思うんですよねぇ~。
懐古主義では無いんだけど、古いものや、古いと思われている思考や、先人達の知恵を、利用するというか…、今一度、見直す事が必要だと思うんですよねぇ~。