「とは」検索で「医学とは」と検索してみると…
病気を予防して健康を維持することや、病気を治療して健康を取り戻すことを通じて、人の命を守り人生の質を向上させることを目的とした学問…
…と書いてあります。
ウィキペディアでは
医学または医科学とは、生体の構造や機能、疾病について研究し、疾病を診断・治療・予防する方法を開発する学問。
…と書いてありました。
まぁ~難しく考えずに「医学とは?」と問われると、「病気を治す学問」っていう答えでいいと思うんですが、何をもって「病気を治す…」「病気が治る事とは?」…どういう事なのか?と一歩踏み込んで考えてみたんです。
ちなみに…「病気が治ることとは?」…と検索してみると、
治癒は病気や怪我が完全に治ることを指し、「完治」と同じ意味になる。 しかし、「寛解」は症状が軽くなったり消えたりしたものの、それが一時的な可能性もあり、そのまま治るかもしれないが、また再発するかもしれないものを指す。 治癒の場合は、再発する可能性がないときに使う言葉である。 治癒には、「自然治癒力」という言葉もある。
…と書いてありました。
僕自身、鍼灸師になって感じている事なんですが、鍼灸師になる前までと、鍼灸師になって人を治療する立場となった、この21年間で「病気を治す」という考え方が変わったんですよ!
多分、多く人は「病気を治す」という事を「身体を元に戻す」という意味合いで捉えていると思うんです。
よく…アメリカは訴訟大国と言われます。何か不備があったりすると、すぐ訴訟を起こされる。医学や治療においても同じで、治らなかったりすると治療の不備を指摘して医者や病院を訴える。…そんな話しをよく聞きます。
戦後、日本も、随分とアメリカンナイズされているので、医療ミスや治療に対しての訴訟がニュースになったり、最近では患者さんを「患者様」と呼ぶ風潮が広がり、クレーマーと化した患者さんのクレームに、病院側も右往左往しているという話しを聞いたりします。
僕も子供の頃は「病気を治す」という事は「身体を元に戻す」という事だと思っていました。病気になったりケガをしたりしたら、お医者さんが手術をしてくれたり、薬を出してくれて、その薬を飲めば身体は治るものだと、子供の頃は思っていたんですよねぇ~。
でも、今は「病気を治す」⇒「元に戻す」という考え方は、間違っていると思うようになりました。
身体の回復能力がとても凄い人ならば、病気やケガでダメージを受けても、身体は元通りに回復する事はあると思います。なので、元気で若い人なら身体は元に戻るでしょう。でも身体の回復力が低下している人や、若くても元々身体が弱い人は、病気やケガでダメージを受けると、なかなか元には戻せない。
ケガや病気でダメージを受けると、100%の体力が80%までしか力が出せなくなったり、100%の体力が50%までしか出せなくなったりと…、歳を取れば取るほど、こういう現実に直面する事が多くなるんですよねぇ~。
でも、頭の中で、気持というか、脳裏では「若くいたい…」とか、「昔はこれくらい出来ていた…」と考えてしまうから「病気を治す」という事は「元に戻す事だ…」という考えになってしまうんだと思うんですよ…。
…この21年間、東洋医学を学び、鍼灸師として、人の身体を治療して感じてきた事をまとめると、今の僕の考えとしては、
「病気を治す」⇒「バランスを整える」という事だと思うんです。
もともと100%のパフォーマンスが出来ていたのに、ケガや病気で80%までしかパフォーマンスが出来なくなったとしたら、治療で80%のパフォーマンスが維持出来るようにバランスを取る。…これが病気を治すという事だと思うんです。
東洋医学や漢方を学ぶと…
身体のバランスを取る事を重視しているな!…って感じる事が多いんですよねぇ~。
例えば…
やじろべい…、若い人は「やじろべい」を知っているのだろうか?…(^^;) 左右でバランスをとるシーソー…。右に傾くと、左が浮く…。う~~ん(-_-;)
もとい…
例えば…、ある患者さんの身体の中のバランスが右に傾いて咳という症状が出ているとします。もう一人の患者さんは、身体の中のバランスが左に傾いて同じような咳が出ている。
…こういった場合、漢方や東洋医学の考えでは「咳」という症状は二の次で、身体のバランスを戻し整える事を重視します。
右に傾いて咳が出ている患者さんと、左に傾いて咳が出ている患者さんとでは、症状は同じ咳ですが、別な薬が処方されたり治療方法が違ったりします。右に傾いている患者さんには左を重くする薬や治療で身体のバランスを整える事で咳という症状を取る。左に傾いている患者さんには右を重くする薬や治療でバランスを整え咳を治める。(右に傾く…左に傾くは、例え話ですからね!(^^;))
症状が違う場合…例えば、Aの患者さんは右に傾いていて咳が出る。Bの患者さんも右に傾いていて頭痛がする。症状が違う場合でも、右に傾いている事が原因なら、頭痛薬とか、咳止めの薬ではなく、Aの患者さんへもBの患者さんへも同じ薬や、同じ治療をします。
…こういう理屈なんですよね!
東洋医学や漢方を学んでいる人にとっては「病気を治す」⇒「バランスを整える」という考えは理解しやすいと思いますし、一般の人でも、大病を患った事がある人は、この事を理解されていると思うんです。
漢方薬に関して「緩やかに効くもの…」「即効性がない薬…」という認識を持っている人が多いのではないでしょうかねぇ~?
漢方薬にも効能というものがあって、例えば、水のような鼻水には小青竜湯…とか、咳には麦門冬湯…とか、症状を取る事に特化というわけではないけれども、特化した症状を抑える事が出来る漢方薬の効能が、薬のマニュアルや箱に書いてあるので、それほど漢方薬の勉強をしていない、お医者さんでも、簡単に漢方薬を処方できるんですが、一歩踏み込んでその患者さんの身体が、右に傾いているのか?左に傾いているのか?前のめりなのか?後に倒れているのか?…(例え話ですよ!(^^;))…そこまで把握せずに、症状を取るだけの漢方薬を処方していたとすると、その時は効果が出るかもしれないですが、症状が取れても再発したり、別の症状が出たりするので「漢方薬って効かないなぁ~」…という事になってしまうんですよねぇ~。
あっ!そうそう…全てのお医者さんが漢方薬に対して深い知識を持ってるとは限らないのは事実です。今では、だいぶ漢方薬に対しての認知度は高まりましたが、20~30年くらい前は、体調不良で病院に行った際、お医者さんに「漢方薬を飲んでます」って言うと、「漢方?…効かないでしょ!?」って面と向かって言うお医者さんがいたりしましたもんねぇ~。
もう、今はそんな、お医者さんは少ないとは思いますが…
ちょっと話しが脱線しちゃいましたね…(^^;)…話しを戻すと…
漢方薬って、いかに患者さんの身体の状態を把握して、身体の状態に合った薬をタイミングよく投与してこそ、効果を100%発揮できるものなんですよねぇ~。
鍼灸も同じです。…鍼灸は、患者さんの体の持つポテンシャルを、いかに引き出すかがポンイントとなるので、毎回、違うツボにアプローチする事もあれば、根気強く同じツボにアプローチする事で地固めしていく場合もあるんですよね!ですから…、鍼灸の治療をした後にすぐ直後効果が出る場合もあれば、効果が出るのを根気よく待たないといけない場合もあるんですよぉ~。
僕は鍼灸師ですから、漢方薬とか東洋医学の考え方で、病気を治すという事は、身体のバランスを整える事だという事を解説してきましたが、洋の東西を問わず医学に於いて、病気を治すという事はバランスを整える事だと言っていいと思うんです。
ただ、現代医学と東洋医学の違いと言えば…
現代医学は患者さんの期待というか、患者さんのリクエストに応えようと試行錯誤している事だけが、違いだと思うんですよねぇ~。
何て言うか…、現代はコンビニエンス社会で、手軽に便利なモノを好む社会だと思うんです。なので、病気も手軽に治したい。身体の具合が悪くなっても、自分の生活パターンを変えずに治したい。睡眠不足や偏食は身体に悪いという事は理解しているけれども、そんな事よりも仕事が大事だし、自分の時間が大事だから、出来れば薬を飲むだけで治したい。もしくは注射を一本打ってもらうだけで治したい。
…そんな患者さんの希望に応えようとしているのが現代医学で、東洋医学は、生活の改善や食生活の改善を口うるさく言う…。
そんな図式になっているように思えるんです。
以前、脳科学者の先生が言ってましたが、この国は天災とか気候変動が多い地域性からかもしれませんが、日本人は不安になる人が多い人種なんだそうなんです。ですから昔から…山に対して…空に対して…八百万の神々に対して祈る事で不安を和らげていたんだそうです。でも明治時代に入り、科学的な文化が西洋から入ってきて「祈る事に全てを委ねるのは非科学的だ!」という事になり、人々の不安を一手に担うようになったのが、科学であったり医学であったりしたそうなんですよねぇ~。
なので、現代医学は…人々の不安な気持も一手に引き受けている側面があります。例えば…、寿命を延ばそうとしたり、老化を止める事に着目したり、難病といわれている病気の克服に力を注いでいたりと、ありがたい側面もあれば、進歩なのか?進化なのか?やり過ぎなのか?…首をかしげてしまう側面も垣間見えたり…。まぁ~良い面もあれば、悪い面あったりと表裏一体なのが世の中というモノですしねぇ~。
何が良いのかという事は、個人個人の判断で決めていいとは思うんですが、「病気を治す」という事は「元に戻す」という事ではなく、「バランスをとる事」だという事は、頭の片隅に入れておいて下さい。
この考え方を頭の隅に入れておくと、自分の身体に不調が起きた場合、自分でどのような判断をすべきか、何をすべきか…などの考えがまとまりやすいと思います。