医療関係の人から「症状は二の次…」と聞いたら、どう思われますか?
9割くらいの人が「…ん?…どういう事?????」って思うかも知れませんね。
よく、このホームページでは、現代医学と東洋医学の思考の違いを、分かりやすく書いているつもりなんですが…
今回もそのパターンです…(^_^;)
例えば…、どこかが悪くなって病院に行く時は、何かの症状を訴えて…「ここが痛い…」とか「咳が出る…」とか「便が出ない…」とか、体調の変化に伴う、色々な症状を治して欲しくて、病院や治療院に行くと思うんです。
でも、その症状を取って欲しいのに、治療者側から「症状は二の次…」と言われたら、患者さんとしては「この人は何を言っているんだ?」「こいつは藪医者なのか?」と疑念を感じると思うんですよね…。
ここで患者さんに理解してほしいのが、これは「治療する側の人が、どういう思考で治療をしているのか?」…という考えの違いが明確に表れる分岐点のようなもので、多少のグラデーションはありますが、治療方法って、大きく分類すると、現代医学的思考と東洋医学的思考に分かれるんですよね!
これは医者とか鍼灸師とかの区別ではなく、どういう思考で治療を行っているのか?という分かれ道なんですよ!
現代医学的思考が強い治療者は、エビデンス(科学的根拠)を重視して、症状を取る事を優先すると思うんです。
簡単に言えば…「症状を取る事で、体は楽になるので、健康体に戻る」…という考えですね!
確かに症状を取れば、患者さんも喜ぶし、「あそこに行けば、あっという間に治してくる!」と噂にもなりwin winの関係が出来上がり、言う事なしなんですが…
薬剤に関して言えば…、裏を返せば…「症状がすぐに取れる=強い薬を使っている」という事でもあったりします。
でも…、症状が、すぐ取れる事は、健康体を維持するうえで、患者さんにとって、全てがプラスになるのかというと、そうでは無い場合も多々あるんですよね!
症状が取れると、患者さんは、また…すぐに…体や精神的に無理を強いる生活に戻ってしまう…。いわゆる、病気を発症した環境に戻ってしまいがちになる…という事です。
例え話としては…
「癌」…、御存じの通り、遺伝的や突発的なものは別として、癌は自分の細胞が暴走することで発症する病気ですよね!なので、食生活や生活パターンの乱れが大きな要因の一つと考えて間違いないと思うんです。
随分、癌治療も昔より進歩はしてますが、未だもって、日本での癌治療は、抗がん剤や放射線やホルモン療法といわれる、三種の神器的な治療法が癌治療の主な治療です。…その治療で…、体に負担をかける厳しい治療により、運よく癌の治療が成功したとしても、以前と同じような生活をしていたら、再発という事になりかねない事は、医療従事者ならずとも、身内に癌を患った事がある人がいる人もなら、容易に理解できる事だと思うんです。
ですから…、癌治療や大病の場合は、症状を取るよりも、体の根幹とでも言いますか、食生活や生活パターンの改善が重要になってくるんですよね!
でもって…
現代医学では、痛みを取ったり…、咳を止めたり…、排便を促したり…と、症状を止める事が、薬を使うことで容易に出来るという強みがあります。
なので、適量を与えるのであれば、毒も薬になるわけで…
「症状を取り、患者さんを楽にする事は悪い事ではないはずだ!」という理屈から、現代医学的思考で治療する人は、症状を取る事を第一義としているように見受けられます。
たぶん…、色々な患者さんを診ていて、話を聞いていると病院通いをしてる人は、色々な薬を大量に飲んでいる人が多いので、そんな風に感じるんですよねぇ~。
お医者さんだったら患者さんが訴える症状の数だけ薬を処方するでしょうし、鍼灸師でも「このツボは、この症状に効く」という感じで、症状とツボの穴性を照らし合わせて鍼や灸をする人達も、現代医学的思考が強いと思うんです。
それとは別に…
東洋医学的思考で治療する人は、体が治れば症状も治るはずだという考えで、体を治す事を第一義としますし、経験と感覚を重視するように思えます。
例えば、木の幹が体の本体で、葉っぱが症状だとします。紅葉の時期でもないのに、葉が黄色くなって、葉が落ちる原因は基本的に木の幹に原因があるので、落ちる葉を落ちないように維持するのではなく、落ちる葉は無視して、幹の状態を改善して、新たに若葉が芽吹きやすいようにする。
「咳が出る…」とか、「ここが痛い…」とか、「便が出ない…」とう症状は、体が健康になれば治る症状なので、その症状を取る事よりも、いかに体をいい状態に戻すか!?…という事を目標に治療します。
ここで重要なポイントとなるのは「症状に踊らされはいけない…」という事ですね。
臨床をしていていて、これは…よく感じます…。
患者さんは色んな症状を訴えるんですが、その一つ一つに対して治療をしていると、結果的に堂々巡りに、なりがちになっいてしまうんですよねぇ~。
なぜ、その症状が起こっているのか?…と原因を探って原因を突き止めて、それが治せるものなのか?どうなのか?を思考する。
なので…「症状は二の次…」という事になるわけなんですよね!
よく鍼灸業界で「本治」「標治」という言葉が飛び交いますが、これでいうと症状を取るのが「標治」で、体、本体を治すのが「本治」という事になります。
でも…、体の回復力が強い人は、症状を取る事で、重い荷物を降ろして体を軽くして身動きがとりやすくなるかの如く、症状を取る事で、一気に治る人もいるので、まんざら「本治」が良い治療で、「標治」がいい加減な治療という訳ではないんですよねぇ~。
ここで考えて欲しいのは、症状を取る事が体にとって良い事なのか?症状は二の次として、症状に耐えながら、体を労わる治療をするのが良い事なのか?…という事なんです。
喘息とか、アレルギー反応のような、緊急を要する場合は症状を取る事が最優先事項ですが、そうではない場合はどうしたらいいのか?
先ほど書いたように、回復力がある人なら症状を取る事で、早く健康体に戻れるわけなので、現代医学的思考も、まんざら悪い事では無い。…と思うんです。
患者さんの体の具合による…という事なんでしょうねぇ~ 。
あっ…あと、人間の体って、後戻りできるボーダーラインみたいなものがあって、そのボーダーラインの圏内であれば、どんな病気になったとしても自力で健康体に戻れると思うんです。でも…、警報が鳴っているにも関わらず、いつしか、そのボーダーラインを越えてしまった場合、癌とか大病を発症して、現代医学的な治療に頼らざる負えなくなる。東洋医学的思考は後戻りできるボーダーライン圏内で有効な治療法だと思うんですよね…。
それと…、医療者側だけではなく、患者さんも東洋医学的思考な人と、現代医学的思考の人に分かれると思うんですよねぇ~。
まぁ~基本的に、鍼灸院に来られる患者さんは東洋医学的な思考の人が多いんですが、時々、現代医学的思考の人が、あの病院に行っても、その整骨院に行っても、治らないから、しょうがなく…切腹覚悟で鍼灸院の敷居をくぐって来られる人もいらっしゃいます…(^_^;)
ちょっと前の話ですが…、うちの鍼灸院でも、以前、開業当時から数年通われていた患者さんが久しぶりに来られて…「御無沙汰してます…最近、家の近くの整骨院や病院に通っているんですが、思うように治らないので…鍼でも刺したら治るかな?…と思って…」っていう人がいたんですが、「針を刺せば治るかも…」という思考の人って現代医学的思考が強い患者さんなんですよねぇ~…(-_-;)
鍼灸師も東洋医学を勉強してはいますが、現代医学的思考の人も大勢いますし、お医者さんなどは、特に東洋医学的思考になるのは難しいかもしれません。
医者になるためには、現代医学の知識を頭に叩き込んで、医師免許を取得するわけですから、東洋医学的思考にチェンジするのは並大抵な事ではないと思うんですよねぇ~。
邪推ではありますが…、東洋医学的な思考で治療しているお医者さんは、現代医学の治療に限界を感じて、東洋医学的思考に、新たな道を求めた人のような気がします。
先日、ある漢方医が…「下剤で有名な大黄という生薬があるんだけど、あれは気を動かす薬なんだよ!石膏とか附子とかも気を動かす薬ではあるんだけども、漢方を勉強していない医者は、症状と薬の名前を覚えて、コレにはコレ!的な思考でしか処方しないし、そういう使い方しか知らないんだよね!附子とか大黄とか石膏を使って、気を動かすことで病気を治せるようになったら、漢方医としては一流だね!」
…って言ってました。
まず…現代医学のお医者さんにとっては「気を動かす?」…「気ってなに?」…っていう感じになるんだろうし…、現代医学的思考の人にとっては「気」って謎だろうなぁ~…って思いますねぇ~。
それと…、「症状を取る事を優先すると、患者さんの期待に応える事にもなるので、東洋医学的思考が体にとって、いくら優しいと分かっていても、病院を維持する為には、症状を取る事も必要になるわけだから、西洋医学的思考と東洋医学的思考の選択って、…難しい選択だよね!」
…とも言ってましたね!
まぁ~現代医学的思考と東洋医学的思考を上手に使いこなす事が一番いいわけなんですが…
日本人って、「臨機応変」って、とっても苦手な国民性ですし、すぐ…何かと何かを比較して「こちらが正しい!」と結論を出したがる国民性ですしね…
難しいとこでしょうねぇ~。
僕…個人の考えとしては、遠回りにのようには見えるけど、体に優しい治療は、東洋医学的思考の方が、身体を重要視しているように思えるんです。まぁ~…これは…、僕が鍼灸師で、東洋医学的思考よりの治療をしているからなのかも知れませんが…、やはり、医者であろうが、鍼灸師であろうが、現代医学的思考と東洋医学的思考を上手に使いこなす人が良い治療家だと思いますねぇ~。
そのうえで…、治療を今より充実したものにする為の下準備として、必要だと思う事が一つあるんです。
良い治療って、治療家と患者さんの思考がリンクする必要があると思うんですね!
難しい事ではあるんですが…、患者さん自身が、自分の体の状態を把握する必要性を感じるんですよぉ~。
自分の体は、症状を取ればすぐに回復できる体力を兼ね備えている状態なのか?それとも、地固め・基礎固めをするように治療しないと体調を崩してしまうような状態なのか?を認識する必要があると思うんですね!
そうじゃないと、治療家がプロの視点で「この患者さんは東洋医学的思考で治した方がいい…」と判断しても、患者さんが「私は体力には自信がありますから、症状だけ取ってくれれば、それでいいです。」というように言い張っていたとすると、もうその時点で、患者さんとの連携が取れず、治療が上手くいかなくなるのは目に見えてますよね!
ただ…長年、臨床をしていると…、患者さんって、体の疲れ具合や、老化度合いを認識してはいるんだけれど、気分的に「まだいける!」って感じで、気持ちだけは若さのモチベーションを維持している人が、体調を崩しがちだなって感じるんですよね…。
なので、治療する前に、まず患者さんに、自分の体の状態を認識してもらう事から始めないといけない事も多々あるんですよ。
まぁ~…その時点で、患者さんが納得するか?しないか?…で、治療が上手くいくか…上手くいかないか…が決まりますけどねぇ~。