刺絡を鍼灸師が分かりやすく解説します
刺絡が効く仕組みって何?
…って考えてみたんですが、素直な答えとしては「血行が良くなるから!」これに尽きるでしょうね。なので血行が悪くなって症状が悪化している疾患に関してはとても有効だと言うことです。
…でも、よく考えてみると、おおよそ50%以上の病気の原因は冷え…。血行不良が初期段階で起こる事で体調不良になり病気へと発展していくものなので、刺絡は血行を良くする療法なわけですから、色々な症状に効くという事も頷けると思います。
どういう理屈で効くのか?
刺絡の仕組み?とでも言いますか、どういう理屈で効くのか?というと…刺絡は三稜鍼という特別な鍼を使って一箇所もしくは数カ所、出血を促すために鍼を刺すわけですが、よく教科書的には「滞っている血液を取り去る事で血流を良くする…」と言われます。
一箇所、少量の出血を促す事で、その周辺の毛細血管の血流を改善してバタフライ効果のように、一部分の毛細血管の血流改善が、強いては体全体の血流も改善させるという療法なんですね!
時々、少量の出血した血を「悪い血が滞る」とか「悪血(アクケツ)」と言う鍼灸師もいますが、よく考えてみると血液は悪くないですよね!血液の流れを悪くしている体が悪い…、もっと言えば、血行不良を起こしてしまう生活を日常、送っている事がわるいのであって、血液に全ての罪をなすり付けるのは良くないと思うんですよね…。あっ!話しが脱線してしまいました。
刺絡の場合は毛細血管の血行改善を目標にしています
血管も太いのもあれば細いのもあるわけですが、刺絡の場合は毛細血管の血行改善を目標にしています。皮膚刺絡では吸玉というガラスの器具を使うんですが、このガラス器具を使い陰圧をかける事により「血液をたくさん取る」と勘違いしている人も多いように思うんです。
実はそうではなくて、陰圧をかけることで血流改善の効果を倍増させる目的で吸玉を使います。毛細血管の内圧を変化させる事で血流の改善をはかる道具が吸玉なんですよね。刺絡の場合、刺絡初心者の鍼灸師や刺絡を行った事がない鍼灸師は、血液を取る事にとらわれがちですが、出血はあくまで副産物的なモノだと考えた方がいいと思います。
※過去のブログで鍼灸施術・病気の事について書いたものです。
はりきゅうふくた (2017年10月5日 )ブログより
猫背(円背)と刺絡
”猫背” と“円背” …厳密にはカテゴリー分けがあるみたいですが、一般の人からしてみれば「背中が丸くなる事」という括りで知られている症状ですよね…。
猫背になる原因としては年齢別で色々とあると思いますが、年配の方で背中が丸くなっている人って結構、多いんですよ。年を取ってなくても30代~50代で肩凝りや首凝りや腰の痛みの原因を探れば、だいたいの方が徐々に骨盤が後ろに倒れる
“骨盤後傾” という状態になり、前傾姿勢で動く方が楽になるので自然と腰や肩甲骨内側や肩や首が凝っちゃうんですよねぇ~。
若い頃なら丸まった猫背も自力で伸ばす事が出来ますが、年を取ってくると、だんだん背スジを伸ばすことも出来なくなり背中が丸くなってしまうんですよぉ~。そうなってしまうと背中や肩や首の凝りが普段以上に強くなり、鍼灸院に駆け込まれる方が多くいらっしゃいます。
初期の症状の頃なら鍼やお灸の施術で対応することができますが、だんだん猫背や円背が酷くなり、肩や背中や首への負担が強くなり慢性化すると、今まで鍼や灸の施術で取れていた痛みも、なかなか取れなかったりするんですよねぇ。
今まで丸まっていた背スジがピン!とすぐに伸びる訳ではありませんし、猫背や円背の老人が術後に急に背スジを伸ばしてシャキシャキ歩くなんて話…聴いた事ありませんよねぇ~。でも背スジを伸ばして歩かなくても筋肉の負担を軽くすることで日常生活が随分楽になる事は確かです。
猫背や円背の患者さんに鍼灸施術をしていて感じるんですが、鍼やお灸の施術でも症状を軽くする事が出来なくなってきた場合、猫背や円背の患者さんに対しての刺絡って患者さんから結構、歓ばれるんですよ。刺絡は強制的に血液循環を良くする療法ですから、背中や肩の筋肉を緩ませるにはもってこいの療法なんですよね!
猫背が治る訳ではありませんが刺絡をする事で筋肉の負担を軽くして日常生活を楽にするって、とても重要な事だと思うんですよ~。老化を止めることが出来ないのは誰もが理解してる事なんですが、日々の暮らしを楽に過ごせるようにするってとても大事な事だと思うんですよねぇ。
高熱と井穴刺絡
手が上がらない…首が回らない…ギックリ腰がぁ~…というような急性疾患で鍼灸の施術を受けられた後、患者さんに伝える術後の注意事項を例え話で…「風邪で体温が39度くらいの高熱が出た場合、おおよその目安として体温が下がるのは1日1度のペースで平熱に下がるものですし、それが自然の流れに沿った回復スピードでもあるんです。もしも薬が功を奏して効いて一気に平熱と言われている36度台に下がったとしても、ついさっきまで身体は39度や38度の高熱を出していたわけだから、いくら今、平熱でも体は本調子ではないという認識を持たなくてはいけないんですよ…。だから、痛みが取れたからって、すぐに無理せずに、鍼灸の施術を受けた後も2~3日は用心して下さいね!」って言ってます。
僕が時々やってる療法の一つに『刺絡鍼法』というのがあるんですが、その中に井穴刺絡という指先のツボに対して行う施術があるんです。まぁ~この井穴刺絡は色々な症状に使えるんですが、僕が学会に所属してた頃、教科書的には現代○学的に「体温の調整に好影響を与える」とありました。(当時は体温を下げるって教えていた先生もいらっしゃったように記憶してます…。)
しかしながら、僕の経験上、風邪で37~39度出た熱が井穴刺絡をしたからと言って、数時間後に36度の平熱になる事はありませんし、よく考えてみればウイルス感染に対して体が発熱する事で対応しようとしている訳ですから、体が発熱してウイルスを撃退出来たら体温は自然に下がるはずですよね。たとえ井穴刺絡で体温が下げれたとしても、ウイルスを撃退する発熱過程において無理矢理、熱を下げるのは良くないはずです。
僕自身が経験してる事なんですが、井穴刺絡で熱は下がりませんが、呼吸が楽になるんですよねぇ~。風邪での発熱で、37度や38度で呼吸がつらくなる事って無いんですけど、体温が39度を超えると呼吸がつらくなります。「フゥ~……フゥ~」って感じの呼吸の辛さです。(オノマトペで言うと「フゥ~……フゥ~」よりもっと呼吸がつらくなると「ハァ~…ハァ~」になるのかな???)発熱で39度を超えて呼吸がつらくなった時に井穴刺絡をすると熱は下がらないけど呼吸は楽になるんですよ!…呼吸が楽になるとゆっくり眠れるんですね…。
僕はインフルエンザの時と食中毒の時に、井穴刺絡で呼吸が楽になる事を4回ほど経験しました。そう言えば、まだ僕が刺絡の勉強をし始めた頃に読んだ本の中で、第二次大戦中に南方の戦地でマラリアを発症した兵士に対して特効薬のキニーネが無くなった時、井穴刺絡で対応していたというくだりを読んだ事がありますが、この事と僕の実体験を合わせると、基本的に高熱の時に井穴刺絡を行えば、熱が下がるというのではなく、呼吸を楽にする事で体力を温存させ乗り切るという解釈の方が正しいように思います。
まぁ~高熱が出て鍼灸院に来られる方はいらっしゃいませんし、鍼灸師でも刺絡鍼法をされる方は少ないので、この発熱に対する井穴刺絡の効果や恩恵を実感できるのは刺絡をしている鍼灸師…もしくはその家族くらいしかいないんでしょうが、高熱が出た時に呼吸が楽になるのは事実ですよぉ~!
なぜ?井穴刺絡で呼吸が楽になるのか?…ですって?… 説明出来るけど、文章が長くなりそうだから、ここでの説明は止めておきます…(苦笑)
奔豚病・梅核気に刺絡療法
奔豚病(ほんとんびょう)とは、お臍のあたりからドキドキが駆け上がってきて、咽を通り過ぎて最後に顔がカーッと熱くなるような症状で、お医者さん達のの解釈ではパニック障害の障害の症状の一つとなってます。
梅核気(ばいかくき)は、喉に引っかかるような違和感のある状態で、吐こうとしても飲み込もうとしても違和感が取れず、梅の種が喉に詰まった感じに似ているから、梅核気という名が付いたと言われています。現代医学ではヒステリー症状の一つと考えているみたいですね…。
東洋医学では、どちらも気の上逆で起こるとされています。「気」というのは、エネルギーと考えていいと思うんですが、普段は頭からお腹に向けて流れているエネルギーが、お腹から頭に向けて逆に流れてしまう事で起こる症状と考えられています。
漢方薬では半夏厚朴湯など、気を降ろす効果がある薬を使うんですが、気が上に上がりがちな人は足が冷えているので、通常、鍼灸の場合は足を温め、気が集まるお腹周辺を鍼と灸で整えて対応します。
先日、半年前位から色々な症状で来られている男性の患者さんが、梅核気のような症状を訴えられていたので、お腹を整える施術に加え、胸骨及び不容穴へ皮膚刺絡をしたんですが、施術後の直後効果がすこぶる良かったみたいで、恍惚な表情を浮かべて帰って行かれました。この患者さんの場合は、時々背中や肩に皮膚刺絡をしているので、刺絡に対する理解があったから、胸骨周辺や不容穴に皮膚刺絡が出来たと思いますねぇ~。
基本的には奔豚病や梅核気は女性に多いとされていますが、男性でも気の上逆は起こります。
患者さんが女性の場合、男性の鍼灸師だと場所が場所だけに胸骨及び不容穴へ皮膚刺絡はなかなか、容易くは出来ませんが、女性の鍼灸師で刺絡を取り入れている人なら、女性患者さんへの胸骨及び不容穴の皮膚刺絡が出来ると思います。
注意点としては、皮膚が薄い箇所に皮膚刺絡する場合は、軽めに吸角をかけないと痕が残りやすくなる事を考慮しないといけない事と、痕は必ず消えるけれども患者さんの体質や皮膚刺絡をする箇所によっては痕が消えるのに1ヶ月以上かかる事があるという事を、患者さんに事前に説明して承諾を得た方がいいと思いますねぇ~。でも…奔豚病や梅核気への皮膚刺絡…。これは使えるなぁ~。
まずは捻挫と打撲の違いについてですが…
捻挫は可動域以上の負荷が関節にかかり傷めてしまうものを言い、捻ったりした方向に動かすと痛みが酷くなったりします。打撲は転んだり、何かにぶつかったりして組織を損傷してしまったものを言うんですが、ともに症状が酷い場合には靱帯や骨にまで損傷する事があるんです。
まぁ~どの症状や病気にも程度というモノがあるので、軽い捻挫や打撲もあれば、重傷化する捻挫や打撲もあるわけです。現代医学の基本的な考え方としては、軽度のものだとRICEと言って
1.Rest(安静)
2.Ice(冷却)
3.Compression(圧迫)
4.Elevation(挙上)
を基本処置としています。
基本的には皮膚表面に腫れや炎症などの変化が見られなくても、内部で内出血や炎症が起こっている場合もあるので、損傷部位を拡大させない為にも、とりあえず初期の処置として” 安静・冷却・圧迫・挙上” を行うんですよね!
なのでケガをして24~48時間以内は風呂などに入って患部を温めない方がいいですし、RICEの処置をしても痛みが増すようなら病院でレントゲンなどの検査を受けて骨折が有るか?無いか?を調べる方がいいと思いますが、レントゲンで骨折がなくても腱の損傷などの場合は時間の経過とともに痛みが増す場合もあります。
僕が去年の7月に右手首を打撲した時もレントゲンでは異常はなかったけど、ある動きで痛みが出る事が続き、完治するまでには4ヶ月ほどかかりました。
軽い捻挫や打撲の場合は鍼灸療法で対応できるので、「転ろんでココが痛いんだけど…」とか「打ち身が出来てしまって鬱血して痛いんだけど…」という場合は症状の程度を見極めて、鍼灸で対応できるモノは施術しています。でも、正直なところ…骨折が隠れている場合があるので、出来れば病院で骨折の有無を判断してもらってからの鍼灸施術が望ましいんですが、「病院より鍼灸の方が効果があるから…」と捻挫や打撲で鍼灸施術を受けに来られる人もいらっしゃるんですよねぇ~(苦笑)
先日、来られたKさん。…去年の春頃に腰痛で3回ほど来られていたんですが、久しぶりに連絡があり「昨日、娘の電動自転車に乗っていて転んでしまい自転車の下敷きになり右の足首を捻って、昨夜は痛くなかったんだけど、今朝から急に痛くなってきて…鍼灸で何とかなりませんか?」と仰る。
患部を見ないとわからないので、とりあえず来院してもらって患部を見たら、明らかに左の足首に比べて右の外踝が腫れていて、痛いと言われる場所に内出血がありました。
話を聞くと、乗り慣れていない電動自転車で転けてしまい、足首を底屈した状態で自転車の下敷きになってしまったらしく、1日過ぎた状態でも足首を底屈すると痛いので、歩くときにつま先を着かないように、踵だけで歩いているとの事…。御本人曰く、「体重を足首にかけても痛くないから骨折はしてないと思う…」との事でした。
まぁ~僕としては万全をきす為に、骨折が有るか?無いか?レントゲンを使って病院で骨折がないか調べてきて欲しかったんですが、患者さん曰く「以前、こんな感じで病院に行ってもレントゲンで骨折がなくても、牽引されたり、湿布を出されたり、リハビリさせられたりで、治るのに時間がかかったから…鍼灸ならなんとかなるかな…って…」…と仰る。
腫れてはいるんだけど、体表観察した限りでは軽傷の捻挫と判断したので、「もしも明日までに痛みの軽減が無かったり、痛みが酷くなっていたら整形外科に行って下さいね!」…という条件で、腫れている患部に皮膚刺絡を施しました。足首だったので2号の吸角が役にたったんですが、施術後に歩いてもらうと「足首の底屈をしても、まだ少しは痛みはあるけど、とても楽に歩ける!」と言われるので、3日後にもう一度、来てもらったんですが、日に日に良くなっていて、今は患部を押せば少し痛いけど、歩くのには何も問題ないとの事でした。刺絡療法…。ここぞ!という時に役に立つ療法ですゎ!
痺れに刺絡
ここ最近、休みの日に天気が良かったら、玄関先や駐車スペースの雑草取りをしてるんです。
去年の夏は暑すぎて全く雑草取りをしていなかったので雑草は生え放題で、グランドカバーとして植えていたイワダレソウも成長している所と、枯れている所がまばらになっていて「これは土壌改良しないとダメだな…」と思ったもので、1本1本雑草を引っこ抜くのは違い、スコップで土表面を削いで、篩にかけて、新しい砂を混ぜるというような作業をしているんです。
今年は2回ほどしたんですが、午前中3時間…午後3時間くらいの計6時間、篩で土と雑草と格闘していたら、右の親指の先っぽが痺れてしまい、少し感覚が鈍くなってしまったんです。
次の日には治るかな?と思ったんですが、感覚が戻らず「あら!?…困った…!」3~4日しても感覚は戻らず痺れた状態だったんです。
お灸をしても熱いだけで、さほど効果無し…。
多分、手足の血管が収縮することで起こる血管性運動神経障害…いわゆる白蝋病のような症状なんじゃないかな?…と思ったもので、「血管が収縮することで起こる血管性運動神経障害なら刺絡じゃん!!!」と思いたち、井穴刺絡というわけではなく、痺れを感じている所に刺絡してみたんです。
直後効果は感じませんでしたが、刺絡した後、日に日に感覚が戻ってきたんですよねぇ~。
血管性運動神経障害による痺れには刺絡!…いいですよ!コレ!
・瘀血って何?
(2016年12月24日)
ちょっとマニアックなお話しになることをお許しください。
年末の大掃除にむけて資料の整理をしてたら以前、講義をした時のメモが大量に出てきたので備忘録的な感じでブログに綴ってみようと思います。
刺絡の勉強をしてたり、腹診の勉強をしたり、漢方薬の本を読んだりすると【瘀血】というワードが出てきます。
今から3~4年前に、当時所属していた福岡刺絡研究会で刺絡に関して1時間ほど話しをする事があって、色々と資料を集めて原稿をまとめていたんですが、必ず【瘀血】というワードが出てくるんですよねぇ~。学生時代を含めると鍼灸に携わるようになって16年…【瘀血】に関しては自分なりに理解しているつもりですが、素人の人に「瘀血って何?」って問われると「瘀血はね!これこれこういう物なんだよ!」とズバッ!と答えれない感じの代物…。「悪い血」「古い血」「ドロドロの血液…」などなど、的を得ていて素人の人にも分かりやすいような表現の仕方は色々あるんだけれど、なんとなく僕的には相手を煙に巻く感じがして…ハッキリと「これが瘀血ですよ!」と目に見えて一刀両断できないんだよなぁ~って感じてたんですよねぇ~。瘀血に関してズバリ解説してる書籍も無いし『刺絡鍼法マニュアル』にも瘀血に関しては詳しい記載は無いんですよねぇ~。
昔の書籍(江戸時代やそれ以前のもの…)にも瘀血に関する事は書いてはあるんだけれども、数行だけだったり瘀血の事を言っているんだろうと思われる文章だったり、漢文だったり…と読み辛いし…。ならば「近現代の先人達は瘀血をどう捉えていたのかな?」と思ったもので、ちょっと資料集めしてみたんですよぉ~。
昭和16年(1941年)『漢方と漢薬(第8巻 第3号)』で間中喜雄先生が「瘀血とは何であるか?」というタイトルで文章を書かれていました。この間中先生の文章に対して返答する感じで、昭和16年(1941年)『漢方と漢薬(第8巻 第7号)』矢数有道先生が「瘀血論」という文章を載せてらっしゃいました。
今どきの感じで言えば間中先生と矢数有道先生が紙面で瘀血を題材にバトルしてる…。結構激論を繰り広げられているので読んでいて面白かったですねぇ~。
そして、この昭和16年の間中先生と矢数有道先生のやりとりを総括する形で昭和50年(1975年)に『日本東洋医学会誌』の中で矢数有道先生のお兄さんである矢数道明先生が「瘀血をめぐって」という文章を書かれています。
他にも昭和30年に『漢方の臨床』の誌面に大塚敬節先生が「瘀血についての管見」という文章を載せてらっしゃいますし、昭和47年には『東洋鍼灸医学 経絡治療』に久住恒夫先生が「瘀血証について」。昭和50年には『東洋鍼灸医学 経絡治療』で岡田明祐先生が「瘀血について」。平成20年『北米東洋医学誌』では瘀血を特集していて、池田政一先生が「瘀血の治療」。児玉亨先生が「見える瘀血、見えない瘀血」という文章を掲載されてます。また平成20年には高知の西田皓一先生が『瘀血を治す』という本を出版されてます。
これらの資料を読んでみると、それぞれの先生が瘀血について考えを述べられていて、色々な仮説を立てていらっしゃるんですが、「これが瘀血です!」と断言できたり、証明できるものではない物だという事がわかります。
簡単に【瘀血】を解説するならば、瘀血は概念であって各論的な視点で理解しようとしても無理だという事なんでしょうねぇ~。なので1つの考えに固執せずに、先人達の考え方を理解して吸収した上で、トータル的な見方で瘀血の治療にあたるべきだと思うんですよねぇ~。そうなると漢方薬だと駆瘀血剤。鍼灸だと刺絡は外せないよなぁ~。
・矢数有道 著『漢方治験論説集』
(2017年4月13日)
古本屋さんで矢数有道先生の『漢方治験論説集』を見つけたので読んでみました。
矢数有道さんって39歳で亡くなられていたんですね…。
以前、瘀血の事を調べようとして、昭和16年に『漢方と漢薬』に投稿されていた【瘀血論】を読んだ時に、矢数有道さんってとても弁が立ち頭の回転が速い人だったんだろうなぁ~って感じたんですよねぇ~。
この本は昭和53年に出版されていて、お兄さんの矢数道明先生が遺稿を【Ⅰ.漢方症例治験集】【Ⅱ.漢方治療論説集】【Ⅲ.漢方鍼灸論評集】と三部に分けたモノを一冊にまとめた本なんですが、なかでも【漢方鍼灸論評集】は「鍼灸薬融合の方法に対する私見」とか「漢方医の立場から「灸の話」放送事件を見る!」とか「宮本武蔵と漢方医術」とか「瘀血論-間中氏の「瘀血とはなんぞや」を読んで見て」などなど、漢方医でない僕ら鍼灸師が読んでも十分楽しめ、勉強になる投稿が多く載っていました。
4年ぶりに【瘀血論】を読みなおしてみましたが、忘れている事や、読み飛ばしていた箇所もあったりと、「へぇ~~!」「ほほぉ~~!」と1人で驚嘆しながら読んでおりました。
漢方医や薬剤師の方達は知っていて当然なのかも知れませんが、今回、僕にとっての新しい発見は、漢薬の駆於血剤(当帰、川芎、芍薬、地黄、牡丹皮、桃仁、桂枝、紅花、蘇木、益母草)って本草綱目式の薬能論から、何の臓器に働きかけるかというと全て肝経に入るらしんんですよ!なので「「駆於血剤と肝臓との関係」から「瘀血証と肝臓との関係」を推測することも考えられてよいと思う。」…と有道先生は書いておられます。
なるほどなぁ~~!
あとがきでは、兄の矢数道明先生が「…よりよい治療法を探究し、また失敗を恐れずつつみなく発表するという真摯な姿勢がうかがわれる。其の結果が、森道伯先生の如く、鍼灸薬の併用から、当時、進んで刺絡にも手を付けていた。刺絡についての発表はなかったが、当時の刺絡研究ノートが一冊残っている。」とあり【瘀血論】のなかでも「…刺絡法は一種の駆於血である。これは内経霊枢に数十項に亘って詳述されているが、その後一時衰微してこれを行う者なく、徳川中期以後に於いて漸く日本では復活された(刺絡編、生生堂医譚治験、東門髄筆、刺絡聞見録、八刺精要等)。特に面白いのは、これら刺絡法の復活は、むしろ和蘭医学の輸入によって刺激されたことであって八刺精要はその翻訳書である。」と書かれていました。
矢数有道先生の「刺絡研究ノート」…気になるなぁ~!北里大学の資料展示室にあったりするのかな?読んでみたいなぁ~!
・唐宗海さん
(2016年12月28日)
「毎日、掃除をキッチリしているのであれば、別に年末に大掃除しなくてイイはず…。」…と、心の中で呟きながら、暇を見つけては大掃除っぽい事をしているフリをしているんですが、またまた過去に講義した時のネタ帳というか…走り書きのメモが出てきたので、ついつい読んでしまうと「結構、面白い事を話してるなぁ~!」と自画自賛モードに突入!(笑)
このぶんだと大掃除など出来そうもありませんので、またまた備忘録的にブログに綴ってみたいと思いまする。(読む時のBGMは中島みゆきの♪時代♪でお願いします…(苦笑))
前々回にブログで書いた『瘀血ってなに?』の続編として、その翌年の2014年に講義したのが『続・瘀血って何?』。前回は近現代の先人達が瘀血をどう捉えていたかを紹介して終わったんですが、この続編は臨床に即したお話しをしたんですよね。まずは瘀血反応が出やすい場所の説明して、血虚と瘀血と血滞の違いについて説明し、唐宗海さん(1846—1897)の『血証論』をベースに瘀血を解説してますなぁ~。
唐宗海さんは清代末期のお医者さんなんですが、陰陽気血水の考え方に “火” の概念を加えた人なんですよねぇ~!清代末期の時代背景もメモしてあるけど、多分、この時代背景の蘊蓄は真柳誠先生のHPがネタもとだな…。
この講義をしたあと、研究会のスタッフからはマニアック過ぎると不評だったけど、今、目を通してみると、2年前のものではあるけど我ながら結構面白いと思うんだよねぇ~…(…と、またまた自画自賛モードに突入!(笑))まぁ~、もう日の目をみない講義録かも知れないけど、この時に調べた事柄や理屈は今の僕の臨床に確実に役立ってますねぇ~。…と三度、自画自賛モード…(苦笑)
BGM………あんな時代もあったねと~♪……めぐる~めぐるよ~時代はめぐる~♪
・『刺絡の道』
(2019年9月28日)
先日、大阪の南先生が福岡に来られた際に「友部先生が刺絡の本を出版されて…」と、教えてくれたので、後日ググってみると今年の6月に『刺絡の道』という本が出版されてたのでアマゾンでポチッと買い…。
一昨日、本が届いたので、少しずつ読んでるんですが、このクオリティーでこの値段…、鍼灸師なら買って、読んで、損はない感じです。さすが現代の三輪東朔…友部先生ならではって感じの本ですね!
この本の著者の友部先生には10年前に月イチペースで半年ほどかけて『薬真途異語』の講義を受けた事があるんですが、自らを三輪東朔の生まれ変わりと言われるだけあって、刺絡に対する想いは誰よりも強いなぁ~と感じたのを思い出します。
幸いにも当時の友部先生の講義録を文字お越ししていて、書面として保管しているので、この『刺絡の道』を読み終えたら、付録として載せてある『薬真途異語』を見ながら、10年前の友部先生の講義録を読みなおしてみようと思います。
・瀉法ですが何か?
(2015年9月11日)
10月の勉強会(もしかしたら11月になるかもしれないけど…)で午後の部に15分~20分程度、講義をしなければいけないので、ちょっと前から疑問に思っていた補瀉の疑問点を僕なりにまとめてみようと思います。
ただ、この「補瀉」という概念…。如何様にも解釈できるので、あ~でもない!こ~でもない!となるのは目に見えている…。所謂、パンドラの箱的なお題だと思うんですよねぇ~!ホントにこの補瀉を論じるには古典に記載してある補瀉の論文?古典…?を理解し考察しなければいけないことは分かっています。でも読破・考察をして結論が出るまでは膨大な時間を要するのは必定。いつになれば発表できるのか???ってな感じになりかねないので、その都度、僕なりの切り口で疑問を投げかけるような感じでまとめて見ようと思います。今回はホントに初歩的な感じ…。よく細~~い鍼をパタパタ倒れるような感じで刺す先生方(僕の勝手な思い込みかもしれません…)が「あれは瀉法だ!」とか「刺絡は瀉法だから!」言われているのを耳にしたことがあるんですよぉ~。何となく瀉法=危険!…悪者ではないにしても危険だから、瀉法はやたらめったらするモノではない的なニュアンスを受け取っていたんですが、第一の疑問として、じゃぁ~
“補法は危険じゃないのか???” 補ったり、与える事が補法ならば、与え過ぎる危険性はないのか?という疑問を切り口にして20分ほど話してみようと思います。植物も水をやり過ぎたら根が腐りますしねぇ~~。まぁ~要はバランス…というところに着地点をもっていこうかなと思ってますが、いかがなりますやら…。
・補瀉
(2015年10月1日)
10月か11月に15分ほど勉強会で講義しなければ…
という話を以前、書いたと思いますが、結局10月11日(日)に講義する事になったらしいので、大急ぎでパワポや喋る内容をまとめなければぁ~!今回は柳谷素霊さんの昭和23年に出版された『補瀉論集』の冒頭の部分だけを利用させてもらって話をしようと思うんですが…
補=与える。益す。加える。救う。
瀉=取る。奪う。減ず。尅す。殺す。抑える。
という感じで「補瀉」を捉えているみたいなんですよね!。まぁ~基本的には間違っていないんですが…
なんとなく言葉だけで見ると “補” は、与えたり、加えたり、救ったり。 “瀉” は、取ったり、殺したり、抑えたり…。
瀉の方が何となく極悪なイメージに見えてくるのは僕だけでしょうか?
…(笑)
治療とはバランスを調えるものだと理解している人なら、そんな「極悪なイメージ…」で見たりはしないと思いますが、なんとなく「補うことはイイ事だ!」と考える人…「刺絡は瀉法です!だから気をつけなければいけない!」と言ってる人は瀉するより補うことを良しとしているのではないか?
まぁ~本来ならバランスを取るのが☆療なので、瀉法が必要な場合は瀉すし、補法が必要ならば補う。
バランスを調える手段としての補瀉であるという、当たり前の話を雑談を交え、脱線しながら?(苦笑)喋ろうとおもいます。
・またまた補瀉について…のたまいける。
(2017年5月27日)
【口訣】というワードで検索していたら、日本東洋医学雑誌に掲載されていた講演の文章に出くわしたんですが、『傷寒約治』の文章が紹介されていて “高価な薬を用いる害について” …について書かれてました。『傷寒約治』という本…、傷寒論に関係している本だとは思うんですが、『傷寒約治』で検索をかけると香月牛山という名前が出てくる。…たしか、香月牛山って九州の人でしたよね?
『近頃の治療がヘタな医者の多くは補に偏するなり…~…傷寒の危証を見ては虚実の辨もなく大量の独参湯を用い…~…ただ病人をして、しきりに人参を服せしむ故に邪気を補住して、熱洩れること能わず。多くは死に至る。~…そのなか100人にして1人も脾胃強く天気盛んなる者、自然と熱尽きて癒ゆる類あれば、それを証拠にしておのが術をてらい能をつのる。またかくの如し…~…人参びたしにしても死する者はかほどに大なる補ひ薬を用いても、その補及ばざれば術無しとして、己の術のつたなきを人参にて飾る。』
なるほどな…。この文章を読んでると瀉法を嫌ってた人達の事を思い出すなぁ~。
補と瀉…。補わなければいけない時には補わなければいけないし、害があるものは排除(瀉)しなければいけないというのが道理だと思うんだけど、鍼灸の世界では一部の学会?学派?の人達が一時期、瀉法を親の仇のように忌み嫌っている光景を目にした覚えがありますが、今でもそうなのかな?あれは何でなんでしょうかねぇ~?多分…「補う事は良いことだぁ~♪」という旗の下…思考停止しちゃってるから、あんなふうになるんだろうなぁ~。
・知熱感度測定法と井穴刺絡
(2021年2月13日)
赤羽幸兵衛さん…と言えば…「皮内針法」
もう一つ、赤羽幸兵衛さんと言えば「知熱感度測定法」
今回は「知熱感度測定法」と「井穴刺絡」を組み合わせたら、どうなるかな?というお話。
知熱感度測定法って、鍼灸の専門学校に通っていた頃の教科書…何だったかな?東洋医学概論だったかな?鍼灸実技?の教科書に、1ページくらいで説明が書いてあったような気がします。(…いくら物持ちがいい僕でも19年前の教科書は、もう手元には残ってませんゎ!…手元に残しているのは関係法規と経絡経穴概論の2冊だけです。)
実技の授業でも高山先生だったかな…「こんな器具を使わなくても、線香をこう持って、こんな風にしてすれば知熱感度測定が出来るよ!」と鹿児島弁で教えてくれたっけ…。 (^-^;)
それと、あとは医道の日本社から出版されている、赤羽幸兵衛著『皮内針法』(…僕はこの本を本屋で買った覚えがあるけど、今は絶版かな?)のP12からP21の10ページにわたって解説してあったのを読んだ覚えがありますねぇ~。
方法や、やり方は『皮内針法』の本に箇条書きに書いてはあるものの、知熱感度測定法に関して詳しくは書いてないんです。
で…、ひょんな事から、ある漢方医の先生からヒントをもらって、もう一度、知熱感度測定法をおさらいしてみようかなって思ったんですよ!
…そうするにあたって、もっと詳しく知熱感度測定法について知りたいなと思ったもので、古本の『知熱感度測定法による鍼灸治療法 医学博士 長浜善夫 校閲 / 赤羽幸兵衛 著』という本を入手して読んでみました。
で…、御存知の方は御存知でじょうが、知熱感度測定法とは、左右の井穴に行うんですが、火がついた線香の先を指先の井穴に、器具を使う…もしくは、タバコの灰を落とすかのようにトン!トン!と数を数えながら同じ速度で連続的に叩きつけるようにして、患者が「チクン」と軽く痛いような熱いような感じがした時に合図してもらい、熱く感じるまでにかかった数(時間?)を記録して、同じ井穴の左右差を発見する方法なんですよねぇ~。
赤羽幸兵衛さん曰く「病人である限り、大抵、左右差が現れ疾病と最も関係ある経絡が特に甚だしい差が生ずるものである。」と仰ってます。
なぜ赤羽さんが、この現象を発見したのかは、この本にシーソー現象の事とか、時計の音が聞こえて、ど~の…こ~のと書いてはあったんですが、僕自身、腑に落ちるほどの説明とは言えず、理解しにくかったんです。
けれど、鍼灸は経絡の疎通を改善する事で、体を健康状態に戻す療法なので、病気になれば経絡がバランスを崩すという事はおおむね理解できます。
経絡のバランスが崩れている状態を察知する方法として、脈診や腹診や舌診や、その他諸々、色々な判断方法があるんですが、以外と、どの方法も名人芸に近い能力を必要としたりするんですよねぇ~。簡単に言えば、脈診や腹診や舌診などなど…どれも主観が入りやすく、客観的な側面が薄くなりやすいと思うんです。
まぁ~知熱感度測定法も、火のついた線香を指先にトントンと触れさせる訳ですから、患者さんに恐怖心が起こり、正確に判定できない可能性もあります。
なので、今回、知熱感度測定法をするにあたって、線香を使わず、非接触の瞬間皮膚温度計を使い、井穴の皮膚温を測定して経絡の左右差を見つけようと思うんです。
僕は数年前にスカラというメーカーの瞬間皮膚温度計 (現在は製造中止になってます)を入手していたので、今回、この方法が可能なんですが、近頃、コロナ禍で銃タイプの非接触の温度計が出回ってますけど、1万5千円位出すと生体測定モードと物体測定モードが切り替えれるタイプの非接触温度計が入手出来るんですよ!多分、普通に出回っている生体測定モードのみの非接触温度計は正確な皮膚の温度ではなく、微調整された温度が表示されるプログラムで作られてると思うんですよねぇ~。額の温度を測って36度になる分けありませんからね!
なので、物体測定モードがあるタイプだと皮膚の本当の温度が測定できるはずなんです。実際、僕が持ってるアイリスオーヤマの非接触体温計は生体測定モードと物体測定モードの切り変えが付いていて、比較的、スカラとの瞬間皮膚温度計に近い温度が測定できました。
話しは知熱感度測定法に戻しますが…、
全ての井穴に、線香を使って行う知熱感度測定法は、慣れないと結構、時間がかかるんですが、非接触温度計を使うと手足の井穴の測定は、ものの5分で測定できます。(5分もかからないかも…(^~^;))
ここでお約束事なんですが、虚実の補瀉…。霊枢九鍼十二原編でしたっけ?「補は虚(不足)を補い、瀉は実(有余)を瀉すべし」。…これを基本として施術方針を決めていきます。
この原則に従って…
弱っている⇒興奮させる目的⇒軽い刺激。
興奮している⇒鎮静させる目的⇒強刺激
知熱感度数が多い⇒麻痺している⇒軽い刺激
知熱感度数が少ない⇒過敏すぎる⇒強刺激
測定温度が低い⇒軽い刺激
測定温度が高い⇒強刺激
…となります。
ここで井穴刺絡を組み合わせます。
言わずとも御存知通り刺絡は瀉法なので強刺激に分類されるから、温度を測定して左右の温度差が大きかった場合、測定温度が高かった方の井穴にのみ井穴刺絡を行います。
指先で経絡の変動がを察知出来るのであれば、ファーストチョイスとして井穴刺絡で経絡のバランスを整えるのが一番、良い方法だと思うんですよねぇ~。赤羽幸兵衛さんは知熱感度測定法で発見した経絡のアンバランスを、左右の経絡上のツボへ、軽い刺激と強刺激とを使い分けてアプローチされてましたが、まずは井穴刺絡でアプローチした後、赤羽さんんと同じ方法でバランスが崩れた経絡上のツボにアプローチしても良し、別な方法でアプローチしても良し…。
別に温度を測定しなくても、どの経絡がバランスを崩しているか判断できる名人芸をお持ちの術者は、いちいち知熱感度測定をしなくてもアンバランスな経絡にアプローチは出来るでしょうし、そういう達人や名人芸をお持ちの術者を、僕も何人か知っていますが、正直言って達人や名人芸を持っている人は少ないと思います。
『知熱感度測定法による鍼灸治療法』の序文で、医学博士の間中善雄さんが「日本の鍼灸界は、よく言えば百花爛漫、ありていに言えばテンデバラバラ、どこの誰の言う事が本当なのだか入門者には見当がつかない。…~…赤羽氏の発明した診断方法で取穴すると一穴で、ピタリと患者の訴えが治る事がある(全部そう好都合にはいかないが…)…etc」とあります。この本は昭和29年に書かれている本ですが、今も昔も変わらんなぁ~って思いますね!「(全部そう好都合にはいかないが…)」と書かれていたのには笑ってしまいました。(´^◇^)ァ
基本的には温度差を見つけるために温度計で客観的な数値を弾き出して、経絡の誤差を見つけるわけですが、僕は勝手に左右差が2℃前後ある場合に、その経絡にアプローチしています。
今回、知熱感度測定法と井穴刺絡の組み合わせを、このように書き記したのは、僕一人でやっていても患者さんの数がしれているので、知熱感度測定法は本当に正しい測定法なのか?そこに井穴刺絡をする事で、本当に治療効果が上がるのか?色々な人に追試してもらいたいんですよねぇ~。
あぁ~そうそう!この知熱感度測定法には新経絡という考えが入っています。
「八兪経」「膈兪経」…これって学校では教わった事が無いと思うんですが、長浜善夫さん、丸山 昌朗さんという医師であり戦前戦後に鍼灸や東洋医学の復興に尽力された方々が提唱されたモノなんですが、今はあまり聞かないと思うんですよねぇ~。
この「八兪経」「膈兪経」「裏至陰」が知熱感度測定法には、盛り込まれているので、この新経絡という考えをもう一度検証できる良い機会だと思うんです。
因みに、記録用紙は『知熱感度測定法による鍼灸治療法』に載ってたものを少しアレンジして、こんなのを作ってみました。
※後日談ですが…
数人の患者さんの井穴の温度測定をした結果、調子が良さそうな患者さん、もしくはだいぶ症状が緩和されてきた患者さんの左右の井穴の誤差は、あまり見られないので井穴の温度を測定して誤差が無ければ、別のアプローチで治療を始めますが、顔面神経麻痺とか精神的に病んでらっしゃる方は、どこかしらかの井穴の誤差が顕著に現れるようです。
刺絡は色々な症状に対して効果が高く肩こりや腰痛、背部痛は勿論の事、それに付随する消化器疾患や運動器疾患、呼吸器疾患など様々なものに効力を発揮します。
今まで刺絡をしてきて。鍼灸師である私自身がその効果に驚いた症例を2つほど紹介します。
主訴:胃の具合が悪い
患者:60代 男性
この患者さんは最初、腕が上がらない…首が動かしづらいというような症状で来られました。
数回の鍼灸施術で腕や首の運動痛もなくなり2年くらい来院されていなかったんですが、ある時に電話がかかってきて「以前、肩首が痛い時に鍼灸をしてもらったんですが、半年前に大病しまして手術したんですが、胃の具合が悪いので、ちょっと鍼灸をしてもらえませんか?」…との事。来院されて詳しく話を聞くと胃がんを患い胃体部の切除をおこない、噴門部と幽門部を接合した手術をされたらしく手術は成功して、術後、食事をすると胃が痛くなる…。御本人曰く「噴門部の部分と幽門部の連動動作が上手くいってない感じがするんですよねぇ~。」お医者さんに相談するも「慣れるしかないですね…胃薬を出しておきますので、一気に食事を摂るのではなく食べる量を少なくして時間を分けて食べて下さい」…との事。食事の量は減らしてるんだけれども、食べ物を食べると胃の辺りが重く感じて不快なんですよ…。という症状でした。
鍼灸では胃の不具合の時は、お腹のツボを使ったり、足にある足三里というツボを使ったり、背中の脾兪・胃兪というツボを使ったりするのですが、この人の場合、背中を見せて頂いた時に膈兪~胃兪にかけて凄く張っていて、皮膚の色が黒ずんでいる…。「これは皮膚刺絡だな…」と感じて刺絡をして一週間後に来院された時に症状を聞いたら「先週、鍼灸した翌日から食べ物を食べても胃の重さや痛さを感じなくなったんですよねぇ~。
病院のお医者さんにも、この事を伝えたら「へぇ~不思議ですね!」って言ってたよ。凄く調子いいから、もう一度してくれんかいな?」とのことだったのでもう一度、背中のツボに対してアプローチしたのですが、まだ私自身、この頃は刺絡鍼法をやり始めた頃で、ここまでの効果を期待してなかったですよね…。
でも鍼灸師の僕がビックリするほど効果があった例として頭の片隅に記憶されている一症例です。
主訴:アトピー性皮膚炎
患者:30代 女性
この患者さんのキーワードは「オーバードーゼ」ですね…
この患者さんから得た教訓は「体調が悪ければ悪いほどオーバードーゼ(好転反応)が激しく出やすい!」…という事でした。
この患者さんの特徴としては…
======================
・仕事で1日中パソコンの画面を見ている
・生理不順
・アレルギー体質
・趣味でマラソンをしているが、今まで毎日20Km走っていたのに、最近、今まで走っていた距離が走れない
・嫌な事があると蕁麻疹が出やすい
・雨が降ると蕁麻疹が出やすい
・やる気が起きず、病院に行くと抗鬱剤と睡眠導入剤を処方された
・今までは眠れていたがアトピーが痒くて眠れない
======================
心因性による症状も考えれなくもなく、原因を探ると色々と要因が出てきそうだが取りあえず、まずは主訴のアトピー性皮膚炎の皮膚の状態が悪い背中へのアプローチを開始。
この患者さんのアトピーは皮膚が肥厚している状態で中医学的なアトピーの分類としては皮膚血虚風燥と言われるタイプでした。
アトピー性皮膚炎は現代医学的に言えば食物・ダニ・カビに対してのアレルギー反応を起こすと言われているけど非アレルギーのメカニズムもあると考えられているんですね!
東洋医学的には血熱により内熱がこもり、熱邪が血液を枯渇して精血を消耗し体の滋養を失った状態。基本は五臓(内臓)の虚…。(専門用語を羅列してスミマセン)
週1ペースで3ヶ月ほど背中へ皮膚刺絡を回りから囲むようにしていったらアトピーの皮膚の肥厚もだんだん小さくなってきて、体の痒みも治まって夜も眠れるようになったとの事でした。
数回、施術を受けた後に患者さんから聞いた話しなんですが、初めて鍼灸をした翌日、北海道のマラソン大会に行かれたそうなんですが、翌日、胃が痛くなって(キリキリという痛みではなく…胃が動き出している感じ…)施術後2日間、全身に蕁麻疹が出たそうなんですね!
北海道行きの飛行機の機内で全身に蕁麻疹が出て「これは昨日受けた鍼灸のせいだ!2度と鍼灸なんて行かない!」…と、その時は思ったそうです。
北海道に着いてホテルで次の日もホテルで寝込んだそうなんですが、その翌日は嘘のように体調が良くて翌々日のマラソン大会には参加出来てたらしんですよね。
九州に戻って鍼灸を勧めてくれた友人に飛行機内での出来事を話して「もう鍼灸は嫌だ!」と言ったら、その友人から「そこで鍼灸をやめてはダメ!」と説得されて今に至るという事でした。
オーバードーゼの説明はしていたとは思うのですが、鍼灸を勧めてくれた患者さんの友人に感謝!よくぞ「そこで鍼灸をやめてはダメ!」って言ってくれたって感じです。
経過を端的に書けば…
2診目で手の痒みが消失(この手の痒みの消失が療治を続ける決め手になったみたいです)
3診目:舌は水分が多い状態。苔は少しづつ範囲が狭くなっている。
4診目:痒くて眠れない…という事が無くなった。
9診目:2~3日前に体調が悪くなった。
10診目:背中の皮膚、肥厚・苔癬が酷かったが、色も抜けて明るくなり皮膚も徐々に柔らかくなっている。
この頃には三稜鍼を押し当ててもプク~っと腫れる事(いわゆる外部刺激による蕁麻疹)はなくなった。
3ヶ月くらい施術を続けた後、転勤で他県に移転されたので施術を終了。
東洋医学の専門用語?で言うと腎虚体質による陰分の不足にともない虚熱の発生によるアトピー…。
色々と話を聞いていると、食事の話になり、普段から温かい食べ物を食べる習慣がなく、毎日、お刺身を常食している。…との事。食事とアトピーの関係の話をして、体を冷やす食べ物は避けて温かい食べ物を食べるように提案して患者さんもそのようにされるようにし始めてから徐々に体調も良くなり始めたらしいです。
この場合のアトピーに対する対処方針は「よほど血虚が進んでいない限り病邪に対して先瀉後補」基本的には“袪邪”(きょじゃ)(専門用語の羅列でスミマセン)
古典で述べられている「先瀉後補」を考えると…先瀉:刺絡、後補:毫鍼や灸及び食生活の改善でしょうね!
(外部関連リンクサイト)
※ 刺絡に関しての外部のホームページのリンクです。
《鍼灸師が分かりやすく解説します》
色々な症状を分かりやすく説明してます。以下のリンクをクリックしてみて下さい
※ 首の痛みや頭痛を鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 肩こりや腕の痛みを鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 腰痛・坐骨神経痛・脊柱管狭窄症を鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 四十肩・五十肩を鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 頭痛を鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 鬱と首の動きを鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 風邪に対する鍼灸を鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 顔面神経麻痺や帯状泡疹を鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 逆子のお灸を鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 耳鳴りを鍼灸師が分かりやすく解説します
※ めまいとメニエルを鍼灸師が分かりやすく解説します
※ 刺絡療法を鍼灸師が分かりやすく解説します
院長
福田 徹 1965年生まれ
2003年 国家資格 鍼師灸師免許取得
多くの方が鍼灸の施術を望まれる場合、肩が痛い…背中が痛い…腰が…首が…という症状を訴えて来院されます。
鍼灸では手・足・背中・お腹・頭など、身体のあらゆるツボを使って症状を改善していきます。
初めて鍼灸療法を受けられる方は「肩が痛いのに何で足に鍼をしているんだろう?」と不思議に思われるかもしれません。
これは、肩こりや腰痛に効くツボ(特効穴)が、足や手にある場合もありますが、伝統的な鍼灸療法の場合「なぜ肩や腰が痛くなったのか?」「なぜ頭や首が痛くなったのか?」という根本的な原因を探り、その原因を改善する為に、体全体のツボを使って施術してきます。
2003年から2012年まで福岡市中央区白金で営業しておりましたが2012年3月から早良区野芥に移転し現在に至ります。
初めて来院される方へ
はりきゅうふくた では、予約優先で施術しておりますので、来院される前には必ず電話で予約を入れてください。
施術中の場合、電話を取りづらい事がありますので6~7回コールしてみて下さい。
☎ 092-407-7746
福岡市早良区野芥6丁目1-4
営業時間
午前の部 8:30~13:00
午後の部 15:00~19:00
(休診:日曜日・月曜日・祝日)