『東洋医学はなぜ効くのか』…を読んでみた♪

この本は…たしか…TBSラジオ『プレ金ナイト』という番組の「金曜開店 砂鉄堂書店」というコーナーで、武田砂鉄さんが、この本を紹介してるのを聞いて…

へぇ~…そんな本が出てるんだぁ~…読んでみようかな…と思ったんですよ!

著者の経歴をネットでチラ見すると、NHKで鍼灸や漢方を取り上げた特集番組を手がけている人と、島根大学医学部の副院長さんの共著…との事。

あぁ~…何度かNHKで鍼灸や漢方を取り上げてる番組を見たことがあるけど、この山本さんって人が、あの番組を作ってたのね!…ちょっと興味あるな…読んでみよう!…と、購入して読んでみたんです。

前半は鍼灸の事、後半は漢方薬の事が書かれてました。

まぁ~僕は鍼灸師という仕事柄、ある程度、東洋医学のことは理解しているつもりなので、目新しいことは書いてないだろうなぁ~…と思って読み進めましたが、やはり8割方、知ってる事が書かれていて、昔、学校で習った事を思い出しながら、復習も兼ねて読めたので、読んで良かったって感じでしたねぇ~。

逆に、鍼灸師の僕が、この本に書かれている事を知らなかったら…ちょっと問題かもね…(^^;)

僕が鍼灸専門学校に行っていたのは…、えっと…、今、鍼灸師になって21年目だから…、24年前。3年間学校で基礎理論的な事を学んだんですが、この本に書かれていた鍼灸の事は、鍼灸理論で教わった事と、生理学で教わった事が書かれてましたねぇ~。

ただ…「炎症反射」の事は知らなかったなぁ~。

「炎症反射」って、迷走神経と脾臓を介して起こる抗炎症作用なんだそうな…。

習ったけど、僕が忘れているだけなのかな?と思って調べてみたら、この「炎症反射」は論文が2002年にネイチャーで発表されているらしいんです。…2002年って事は、もう、僕が鍼灸の専門学校の3年になってる頃なので、その時は国家試験の勉強でイッパイいっぱい…の頃ですねぇ~。

2002年にネイチャーに発表されてから、その事柄や考え方が一般に浸透するまでには数年かかる事を考えると、僕が知らなくても当然か…と思う反面、こういう事は、日頃から情報を収集するアンテナを張っていないと、知らないままで過ごしてしまうわけですよねぇ~。…普段、よほど親切な人が傍にいない限りは、誰も教えてくれないしねぇ~…(^^;)

今回の「炎症反射」の件に関しても、この本を読まなければ、僕は知らないままで終わっていたわけで…

何歳になっても…、臨床経験が長かろうが、短かろうが…、情報収集は必須だな…と思いましたねぇ~。

後半に書かれていた漢方薬の事も、手前味噌という訳ではなく…、父が漢方医なもので、僕が子供の頃から漢方薬に慣れ親しんで育ってきた為「門前の小僧、習わぬ経を読む…」的な感じで、一般の人よりも少し詳しい程度…、爪の垢ほどの漢方薬の知識は持ち合わせているので、なんとなく知ってる事が書かれてました。

そんな中、なるほどなぁ~って思ったのが…「漢方薬が腸内細菌の上質なエサになる…」って項目は…面白かったですねぇ~。

漢方薬を構成する生薬には、それぞれ抗炎症作用があったり、鎮痛作用があったり、解熱作用があったりするので、その生薬の作用だけをみると、現代医学の解熱剤とか、痛み止めと同じ感じで、漢方薬を捉えてしまいがちですが、その症状を取る漢方薬もあれば、飲み続ける事で効果を高める漢方薬もあるわけなんですよねぇ~。

よく薬は飲み続けるものでは無いと言われる場合もあれば、飲み続けた方が良いと言われる場合もあったりと、矛盾している感じで「漢方薬って難しいなぁ~、結局、飲み続けていいと言う事は、お茶と同じ感覚で、あまり効かない…、即効性がないという事でしょ!?」…と、誤解してる人も多いと思うんですが、「漢方薬が腸内細菌の上質なエサになる…」という実験結果を見るに、漢方薬は大きく分けて2パターンの使い方があり、漢方薬を構成する生薬の作用で症状を取る場合は、短期的に漢方薬を飲む事で、副作用を出さず、薬が身体にダメージを与える事なく症状を緩和させる場合と、腸内細菌のエサとなり免疫力アップに貢献する事で身体をより良い状態に持って行く場合があるって事なんでしょうねぇ~。

いやぁ~勉強になりますわぁ~。

ただね…、この本の終わりの方…。第4章「人に効く」を科学する …という項目を読み進めていて、おや?…本当?そうなのか?…僕は違うと思うなぁ~と疑問に感じた事があるんです。

「そもそも「効く」とはどういうことか」サンタ論法の戒めと科学的根拠…という項目で、鍼灸治療が腰痛に対して効果がある事を主張するためには、どんな科学的根拠が必要なのか?という事が書かれていたんです。

それによると…

「鍼を打っ…、腰痛が治っ…、だから鍼が効い…」という「」が3つの「サンタ論法」は効果を単純化し過ぎなので科学的根拠とはならない。

…という事だけれど、僕が思うに、なぜ、そんなに科学的根拠に拘るのだろうか?そんなに裏付けの証拠が必要なんだろうか?…って思うんですよ!

必要なのは、科学的根拠で何が効いたかではなく、症状に苦しんでいた患者さんが楽になる事が、一番重要だと思うんです。

この本では、ランダム化比較試験という「腰痛患者を対象に鍼灸を受ける人と受けない人をランダムに振り分け、効果を比較検討して、鍼灸治療を受けた人の方が、腰痛の改善率が高かった」という比較試験が一番有効で、医学・医療の領域で治療法が客観的に「効く」と主張するには、ランダム化比較試験で有効性が示される事が重要だそうなんです。

でもね…、この本にも書かれているけど、「効く」はずの治療法を受けても、全員の病気が治ったり、症状が改善するわけではない。これを「医療の不確実性」と言い、医療行為に於いては100%と断言する事はできず、いつの医療にも、どの医療にも、必ず不確実性というモノが付きまとうわけなんですよね!

…という事であるならば、なおの事、「何が効いたかではなく、症状に苦しんでいる患者さんが楽になる事が、一番重要なのではないか?」…って思うんです。

裏を返せば…、エビデンスだの…、科学的根拠が必要だの…、と言っても「効く・効果がある」という言葉の裏側には「統計的に、どのくらいの割合の人に、どのくらいの効果が期待できる…」という、超曖昧な土台の上に成り立っているのがエビデンスだったり、科学的根拠だったりするという解釈も成立しますよね!

…ならば、無理矢理、東洋医学を現代医学のリング上に引きずり出さなくても良いと思うんですよねぇ~。

例えて言えば…東洋医学と西洋医学って、柔道と空手くらいの違いがあると思うんです。東洋医学と西洋医学の場合、病気で苦しんでいる人を助けるという最終目標は同じですが、アプローチも思考も違うわけですよね!

空手と柔道も、相手に勝てば勝ちですが、ルールが違いますよね!

東洋医学と西洋医学って、同じ道着を着ていても、柔道と空手みたいな感じで、ルールが違うモノだと思うんです。その違うルールの競技を同じリングというか舞台に上げて「このルールに従わなければ医療として認めない!」って、無理矢理感が満載ですし、医療や医学の原点に立ち返るとするならば、人を治療して、病気を治す…。もしくは症状を緩和させる事が目的なわけだから、科学的根拠やエビデンスが成立しなくても、患者さんが楽になれば、それで万々歳だと思うんですよね!

楽になったけど、患者さんが、まだ不安であるのならば、現代医学が得意とする、エビデンスや科学的根拠で「統計的に…どのくらいの割合の人に、どのくらいの効果が期待できますよ!」…と患者さんの不安を払拭すれば良いと思うんです。

なぜ?科学的根拠やエビデンスという1つのルールに全てをまとめなければいけないのかが、疑問に感じる部分ですねぇ~。

話しは少し変わりますが…

数ヶ月前に、大学時代の後輩が脊柱管狭窄症と診断を受けて、腰が痛いとSNSに書いていたので、「大変だね!身体を冷やさないようにね!」って書き込んだら、後輩が「ありがとうございます。フロにつかって揉んだりしてます。お医者さんから鍼灸院や整骨院には行かないでと言われました。」って返事があったんです。なんでも、そのお医者さん曰く「どの治療で良くなったか分からなくなるから…」という理由で「鍼灸院や整骨院には行かないで…」と言っていたらしんですね。

僕は根本的には脊柱管狭窄症は鍼灸で治るものではないと思っています。

でも、どんな病気にも程度(重症から軽症)があるので…、脊柱管狭窄症の病態を考えるに、体の構造・構成を考えると、骨と筋肉で体は支えられていて、脊柱管狭窄症は、いわゆる背骨(頸椎・胸椎・腰椎)の内部の脊柱管という管が靭帯の肥厚などで狭くなって、脊柱管内部で脊髄が圧迫される事で痛みや血行不良を引き起こす病気なんですよね!

あと、もう一つ脊柱管狭窄症の症状を起こす原因があるとするならば、患者さんが糖尿病を患ってる、もしくは糖尿病予備軍で、糖尿病により脊柱管の中の血管のダメージが大きい場合、脊柱管の血管の血行不良が起こる事で脊柱管狭窄症の症状が現れるんですよ…。

お医者さんの治療としては、血行を良くする薬を処方し、リハビリで体を動かす…、もしくは「歩きなさいよ」と患者さんに運動する事を勧めるか、最終手段としては手術で圧迫している部分の骨を一部除去して圧迫を緩めるしか方法がないのが実情だと思うんですよねぇ~。

糖尿病が原因の脊柱管狭窄症であれば、生活習慣や食事の改善が最優先でしょうし、加齢が原因の場合、投薬と運動で血液循環を良くしようとしているのであれば、鍼灸で患部の血行を良くする治療は、脊柱管の中の血管…とまではいかないまでも、脊柱を支えている多くの筋肉のバランスを整える事は、患者さんにとって有用な事だと思いますし、病院の治療と併用してもOKだと思いますが「鍼灸院や整骨院に行かないでね」と言うお医者さんは鍼灸に理解が無いか、もしくは鍼灸の事を認めていないお医者さんなんでしょうねぇ~。

このお医者さんがいう「何が効いたかわからないから…」って、例えば、学会で、この症例を発表したいという思惑があったりすると「色々な治療をすると、何が効いたか分からないから…」という理屈が通ると思いますが、その場合、患者さんは実験対象として扱われる事になるって事ですよね!

「どの治療で治ったか…」っていうのは治療する側のエゴであって、患者さん的には、早く治る…。もしくは治らないまでも、早く症状を軽くする事が重要だと思うんですよね!

…ちょっと後輩の話で脱線しましたが…

この本に書かれている…「『サンタ論法』は効果を単純化し過ぎなので科学的根拠とはならない」「ランダム化比較試験で有効性が示される事が重要」という考えって、患者さんの事を考えてる風でありながら、目の前の患者さんを楽にさせるより、医学・医療というブランドの信頼性を高める事を重視しているように、僕は感じるんですよねぇ~。

この本に関して、これ以外の部分は,楽しく読めたし、復習できて良かったです。

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