以前、今年の5月のブログに「「病気を治す」⇒「元に戻す」という考え方は、間違っていると思うようになった…」という事を『「病気を治す」について一歩踏み込んで考えてみた…』というタイトルのブログに書いたんですが、今回も、改めて…
病気は医療従事者が治すモノではなく、病気を治しているのは患者さん本人の身体であって、意識しなくても常に身体の中では、修復や修正を繰り返しているので、医療は、患者さんの…今の状態の身体のバランスを維持出来るようにサポートしている。…もしくは身体の中を整えている。
これが、通常の体調不良や病気を改善する際の、あるべき姿だと思うんです。
ただし…、現代では医療技術や医療器具が発達し、移植手術やら、IPS細胞で臓器を再生させたり、2~4mmの太さの血管内にカテーテルを入れ、ドリルで狭くなった血管内を削って冠状動脈の血流を改善できるようにしたりと…「病気は医者が治しているだ!…それに対して、なんの疑いを抱く事がある?」…って思うのも、ごもっとではあるんですが…、たしかに、病気があるレベルまで達し、身体の修正能力では対応出来なくなってしまった場合「医者が病気を治す」という図式は成立すると思います。でもね…このような手術や治療を受けなければいけないという事は,相当、身体の状態が悪く、選択の余地がないくらい、重い病気を患っているって事なんですよね!…本来、今、ある程度の健康状態を維持出来ているのなら、「医者が病気を治す」レベルの治療を受けるような、そんな状態になってはダメなんですよねぇ~。
よく…TVを見てると病気の保険のCMで「一時金として100万円が…」とか「充実の保証!」と、謳い文句が出た後に、安心するような笑顔の老人の顔が映って「それなら安心ね!」と,保険に入る事を促すCMを見ますが、病気になって充実の保証を受けるより、病気にならない事の方が大事なんだけどなぁ~って思うんですよねぇ~…(^^;)
話しが脱線しちゃいましたが、ココで書いている『通常の体調不良を改善する際の、あるべき姿…』とは、大病を患わないようにする段階の話しですので、御了承下さいね。
先日、YouTubeで『東洋医学が本当はすごい』という、先日、読み終わった『東洋医学はなぜ効くのか』という本の著者の1人、島根大学の教授、大野さんと、脳科学者の茂木さんと、もう1人、YouTubeのページの開設者の鼎談番組を見たんです。
その中で、大野さんが「漢方薬の生薬の成分は、既に分かっていて、この症状には、この成分が効いているという事も分かっているのだけれども、じゃぁ~その成分だけを抽出して飲ませればいいかというと、そではなく、その抽出した成分だけを飲ましても、効きが弱いという現象が起こるんです…」というような事を話されてました。
確かに漢方薬っていうのは、足り無いものを補う補剤の性質が強い薬もあれば、余っているモノを削ぎ落とすような瀉剤という性質の薬があったりします。
一番有名な漢方薬で言えば葛根湯…。
この葛根湯は、どちらかというと瀉剤の性質が強く、汗が出ない実証の患者さんに使われたりしますが、虚証の場合の風邪には桂枝湯が使われます。…桂枝湯はどちらかというと補剤なわけですよね!
でもね!…桂枝湯に麻黄と葛根が入ったものが葛根湯なんですよねぇ~。だから、葛根湯は瀉剤の性質が強いと言っても、ベースが桂枝湯なので、補剤も入ってるわけなんですよねぇ~。
漢方薬って、瀉剤の中にも補剤が入っているし、補剤の中にも瀉剤が入っているものが多いんですよねぇ~。
先日、読んだ『東洋医学はなぜ効くのか』という本には、漢方薬は腸内細菌のエサになっていて、身体が、その時に必要としているものを取り込んでいる。…というような事が書かれていました。
どうしても、現代人は「効く」という事だけが重要で、「余計な事や、不要なモノは必要ない…」と考えがちですが、意外と、その不要なモノや、余計な事が重要だったりするんですよねぇ~。
鍼灸にも『平補平瀉』という考えがあり、まずは余計なモノを取って、その後に補いバランスを取り、整えるという鍼灸の技術があるんです。患者さんにしてみたら「なんで…そこに鍼や灸してるの?痛いのは肩なのに…」と思われる事があるかも知れませんが、これもバランスを取るための大事な手法なんですよねぇ~。
近年は便利なモノばかりを求め、利便性を追求しがちですが、案外、利便性を求めるが故に、排除された事柄が、意外と重要だったりして、知らず知らずの間に、得るはずだったモノを逃してしまう事が多いのかも知れません。
近頃は「AIが仕事を奪う…」とか、「AIの技術が向上して、人間がダメになる…」という話しを、よく聞きますが、よくよく考えてみれば、そのAIを作っているのは人間だし。人間がやっていた仕事をAIにやらせているのも、人間なわけで…、一番怖いのは人間だと思うんですよねぇ~。
自分でAIを作っておいて、AIが人間をダメにする…って、AIをスケープゴートに仕立てている感じが否めないですねぇ~…(^^;)
またまた…話しが脱線しちゃいましたね…。(^^;)
「医療は、患者さんの…今の状態の身体のバランスを維持出来るようにサポートしている。」…っていう話しですが…
若い20歳代の人と、70歳代の老人とでは、同じ体力であるはずが無いわけですよね!
世代…世代で、違うステージを歩んでいるわけなんです。
「病気を治す」⇒「元に戻す」という考え方は、なぜか年齢の事は考慮せず「病気ではない身体を取り戻す」⇒「元気だった頃に戻る」という理屈を構築して、元に戻らない身体と、元気で若かった頃の自分を照らし合わせ、ジレンマに陥る傾向にあると思うんです。
病気になると言う事は、何かしらの機能が低下してしまうって事なんですね!
歳を取った人が若返れないのと同じで、低下してしまった機能は、元には戻らない。もし、かろうじてその機能が使えたとしても、100%のパフォーマンスを発揮できないものなんです。
なので…「病気を治す」という事は「バランスを整える」と言う事だと思うんです。バランスを取り、100%ではないんだけれども、今、出来る限り可能なパフォーマンスを発揮できるように身体を整える事が、人を治療するという事だと思うんですよね!